風来記

侍モドキとバイクの放浪旅を綴ってます。

稚内

まさか、宗谷岬でキャンプできることになるとは思わなかった。

まぁ、吹き荒れる風雨の中走るわけにもいかず、そうせざるを得なかったのだが。

「この辺、前にクマが出たから気を付けてねー。」

岩手あたりから、テントを張ると文句を言われる代わりに、クマに気を付けてと言われるようになった。拒絶されないのはありがたいが、やはり言われると恐ろしい。

 

急坂の上にある宗谷岬公園は、海風が直に叩きつける丘陵地帯。

金を出したんだ、大丈夫だとはわかっていても、フレームが折れないかとか、フライシートが吹き飛ばないかとか気になる。

まさに最北端の岬のほうでは、ウゥンウウンと風が唸る音。それに交じって、雨粒が叩きつける音。

間違いなく、今までで一番恐ろしい一夜だった。

 

 

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さて、踵を返し、今度は沖縄まで…。

といきたいところだが、ここから南下するとまた雨と遭遇してしまうらしい。

仕方がないので、稚内の町を散策することにした。

 

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稚内港北防波堤ドーム。

戦前に稚内~樺太間の定期船発着所として建てられたものらしい。

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古代ローマの柱廊を思わせる外観はドームと呼ばれており、世界で唯一のものらしい。…ほんとか?

 

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大正12年、ここ稚内から今はロシア領の樺太・大泊まで、国鉄稚泊航路が開設されたという。近くに機関車のC55型主動輪があるから、てっきり線路でも敷かれていたのかと思ったが。航路である。

 

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鉄道ファンの聖地はこっち。JR稚内駅の前にある。

かつての前稚内駅にあった線路を復元した、日本最北端の線路である。往年はここからさらに、先ほどの防波堤ドーム横まで線路が続いていたのだという。

…正直、ここまで来ると日本最北端の食堂だとか、日本最北端のガソリンスタンドだとか、まぁそうなのだろうが、最北端の叩き売り状態である。

 

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ロシアに近い地というだけあって、時折看板にロシア語が見られた。仮にもロシア語を学んでいる身としてはうれしい発見。

 

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海の駅『稚内副湾市場』へ風呂に入りに来てみたが、風呂どころか食事処も閉店済み、ガランとした半ば廃墟のような状態だった。

 

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稚内はもっと平坦な土地かと思っていたが、宗谷岬手前から見られたあの絶壁ともいえる丘陵が町の背後に広がっていて、居住地は狭い印象だ。

地図によるとその丘の上に無料のキャンプ場があるとのことで下見に行ってみたが、道のりはかなりの急斜面で、デコボコもあるうえに肝心のキャンプサイトは駐車場から若干坂を登る位置にある…とイマイチ。断念した。

 

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これはその丘から降りるときに見つけた『氷雪の門』。

かつての日本領・南樺太には終戦当時約42万人の日本人が生活していたが、ソ連軍の進撃により人々は全てを捨て本土へ逃げおおせることに。

この碑は、その無念を想って建てられたものだそうだ。女性が、天を仰ぎ涙を流している。

 

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その隣には、「皆さん これが最後です さようなら さようなら」と意味深な碑も。

樺太の真岡(現ホルムスク)郵便局で、ソ連との戦火の中ギリギリまで通信業務を死守した9人の女性のための慰霊碑なのだそう。

刻々と近づく命の終わりを悟って、上記の言葉を残し、青酸カリで自決したのだという。

 

さすが、国境間近の土地というだけあって、そういった類の話が溢れかえっている。そういえば宗谷岬にも、かつて「バルチック艦隊だ…」と騒がれた時代にロシアを監視していた建物が残っていたな。

見果てぬ地へ進出するという夢と、そこから出ざるを得なくなった無念とが、今も色濃く残る地がここ稚内なのである。

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ノシャップ岬をすぎ、徐々に道の進路が南へ向きだすと。海の向こう、白く霞むそのまた向こうに、雲を纏う雄山が見えた。

「あれが、利尻島っていうんだろうか…。」

この時期に雪をかぶっている、うすら青いその姿は美しく魅力的なのだが。残念ながら今はフェリーに乗る余裕はない。

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いつの間にかそんな離島が見えるほど雲が晴れていることに気付いたが、それでも南はけっこうな雨量らしい。

思いかえせば、風呂は閉店済み、キャンプ場までの道は険しい、コンビニは2ℓの飲料水がなぜか割高の『京極の名水』しか置いていないセイコーマートのみ…と、最果ての地らしい未経験に苛まされるばかりだったが。

今、晴れているのはこの最果ての地だけ……。そう思うと、変な優越感が沸き起こるのだった。

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