綺羅めく彼らより
6月26日
“美しく、明朗で王者の如し”。
自ら『日本で最も美しい村連合』なんてものを設立するほど、自分たちの居場所を美しく、また誇らしく思っている町。美瑛町。
巨大噴火によって形作られたというこの丘、名付けて『パッチワークの路』を眺めながら、別れを告げた。
脚を動かせば、必ず行きたい場所に辿り着けるということを教えてくれた町に感謝。
(どうでもいいが。いやよくないが、札幌あたりからピントが甘い。故障したか…?)
本日の夜から明日の朝までは大雨が降るとのことなので、やむを得ず旭川の手軽なスーパー銭湯を利用することにする。
旭川の街を地図を通して眺めていたら、またしても気になる場所があったので訪れてみた。
『雪の美術館』である。
またなんとも、ゲームに出てきそうな…。
館内はヨーロッパの神殿のようなつくりとなっていて、雪でなくとも歩くだけでけっこうワクワクできる。
もちろん、雪も見られる。
…のだが、6月12日までコロナ禍で休館していたおかげで、冷凍機などのメンテナンスができず、氷は溶けてしまったとのことだ。
だが回廊の美しさは健在である。
最下層のホールは演奏場となっているようで、時間になるとプロジェクションマッピングも楽しめる。天井には7名の画家によって描かれた『北の空』が。是非訪れて見てみてほしい。
この美術館が作られたのは、旭川の地に日本で最も美しい雪の結晶が降るからなのだという。ここに保管されている学術資料を創り上げた小林教授・古川助教授らは、付近の天女ヶ原で雪の結晶の顕微鏡写真を二十余年にもわたって撮り続けた。
遥か上空で水蒸気が凍り、大気中の微粒子と付着することによってできる氷の結晶。
気温や水蒸気の量でその姿を変幻自在に変える彼らは、上空の様子を伝えるまさに天からの手紙として扱われている。…とまぁ、一般的にまとめればそんなところだが、私個人としては氷の結晶にはより浪漫を感じることがある。
上空の遥か孤独で、厳しい寒さの中で。泣き出してしまいそうなほど険しい環境の中で、どんなに小さくとも、自分だけの形を創り上げる彼らは、なんて強いのだろう。美しいのだろう。
どんな辛い目にあっても、自分のスタイルを崩しちゃいけない。煌々と綺羅めく彼らを見ていると、そんな力強さと勇気を、いつももらえる気がするのだ。