直線路
「これからどうするつもりだい?」
道の駅なないろ・ななえにて出逢ったオジサマハーレーライダーたちに尋ねられた。
「ここで寝ようか、次の道の駅まで行こうか悩んでいるところでして…。」
「次の道の駅ってーと、森の方へ行くのかい?」
「(森…? どっちかっていうと海だよな…)まぁとにかく、ニセコの方へ行こうかと。」
時刻は16時。陽も落ちておらず、まだまだ走り足りない時刻だ。
だが、次の道の駅まで行ってしまうと、名所である大沼を通り過ぎてしまう…。
どうしようか…、大沼…。見といた方が勉強になるか…? でも元々そこまで興味は…。
結局、国道5号の北上を続けることにした。
北海道は広い。迷ったら進んでおけという考えもあったのだが、そんな能書きよりも。
今はただ、この道を走ってみたかった。
道路は広く、まるで高速道路を走っているかのよう。
草木は東北に負けず生い茂っているが、極寒に鍛えられているのか筋がよくみえる。猫背にならず、すっくと立っている印象だ。
「札幌まで272㎞」なんて看板に口を開けながら、とにかく何も考えず進んだ。
大沼を横目にすぎると、「森」という看板が目に入る。
…なるほど、森とは地名だったのか………。
6月22日
「うらないしなんてしらないし♪ はなうらないーは…」
内浦湾—別名『噴火湾』を右に臨みながら、快走路をゆく。
地図をパッと見てみたが、このあたりに特に寄りたい場所は見つからなかった。
後続車にはどうぞどうぞと道を譲り、60㎞/hで鼻歌交じり、何も考えず進む。
それでも”噴火湾”という名前に興味を惹かれて『噴火湾パノラマ館』とやらにも寄ってみたのだが、あいにく定休日だったので名前の由来はわからず。ただ、白樺の美しい並木が拝めた。
どこかのメタセコイアを思い出す光景だが、これが普通に在るのが北海道か。
地図上で何もない場所だとは思ったが、実際目の当たりにしてみて本当に何もない場所で驚いた。
道はただ、延々と真っ直ぐに続いていく。上陸前に「北海道 まっすぐの道」なんて検索したものだが、とんでもない。走っていればそこらへんにゴロゴロとあるようだ。
5号線はやがて山の方へと分け入っていく。さすがに多少カーブはあるが、やはり直線路も多くある。
そして何故だかわからないが、また霧に見舞われた。
森を出てブナの名産地である黒松内町に至るまで、沖からの風や山間の寒気に震えながらかなり走ったが。それでもまだ10時である事実に驚く。7時半には出たから2時間は走ったか。
特に寄る場所もなく、ただひたすらストレートを走らされていると。好天ならまた気分も違うのだろうが、”走るのが楽しい”からひたすら走っているという気持ちでもなく。ただ、”することがないから、とりあえず走っている”という感覚に陥っていた。
感情を失いそうになりながら、ただひたすら、走る。走る。
北海道という地は、自分はなぜライダーになったのか。そんなことを考えさせてくれる場所のようだ。