はるばる来たぜ
昨日とは打って変わり、青天をたたえ碧く染まった大間崎に腰を掛け。
はっきりと見えるようになった、これから足を踏み入れる地を見渡す。
デカい。デカすぎる。
今まで走ってきた本州が、もう一個あるみたいだ。
これからあそこへ行くのか………。
明日のフェリー出航まですることもないので、暫く呆ける。
北の地に吹く風になびいて、前髪が視界にチラリ。その中に白い一本も見えた。
「今までそれなりに、苦労はしてきたよなぁ…。この旅でも…。」
出逢った人々、見た景色、得られた知識を思い返す。それらはとても膨大…
「でもないな。」
まだそれほど、ここまで長かったという気分には浸れなかった。
6月21日
ボーーッと音を立て、大函丸はゆっくりと、這うようにして動き始めた。
はじめは微弱に、しかし確実に景色を横に流しながら。
やがて速度は加速していき、大間の地が白く霞んでいく。
本州が、どんどん離れていく。
思えば昔仕事で九州に行ったことはあるが、私は生まれてからこれまで、あの島から一歩も出ていなかったんだな。
こうして見てみると、あんな小さい島で、20余年も暮らしていたんだな。
今まで足を着けていた地から離れる。そう考えると、どこか寂しい気もしたが。
その直後には、とっくに心は奮えていた。
踵を返せば、もうビルの角までくっきりと見える函館市街。
私は今、初めて、島の中の蛙から飛び出したのだ。
同じ日本だろうがなんだろうが関係ない、私にとって、ここはまさに新天地なのだ。
さぁ、
「はぁーるばるっ、来たぜはーーこだてーーーーっっ!!」