風来記

侍モドキとバイクの放浪旅を綴ってます。

人類進歩

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「うっ……うぅ…」「はぁっ…あ~…。」

骨を押しのけ、筋肉にギシギシと食い入る圧力に思わず悶絶する。

「ああー…そこ、もっと下ぁ…。」

お世辞にも健康的といえる使い方をしていない体に、若干の痛みを伴う快感が。

迸っていく。

 

「…よしっ、リフレッシュ終了!」

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コインランドリーに置いてあった無料マッサージ機に体を預けること数十分。そろそろ町も目覚めだす頃だろうということで、岩手北部の沿岸・久慈の地へ踏み出すことにした。

 

 

目指したのは、『久慈地下水族科学館もぐらんぴあ』。水族館なのにモグラとな…?と不可思議な名前に釣られてみるわけである。

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外観は大きいとはいえない。大人700円と水族館としては手ごろな料金だし、小規模なところなのだろうか。

 

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と思いきや、中はこんな様子である。

なんでもここは国家石油備蓄基地の作業抗を活用して作られた水族館とのことで、日本唯一の地下水族館なんだそう。なるほど、それでモグラというわけか。

 

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国家石油備蓄基地とは、その名の通り国家による石油備蓄事業である。1973年の第一次石油危機をキッカケとして取り組み始めたそうで、1998年には5,000万kℓもの備蓄目標を達成したとのこと。

国家石油備蓄基地は国内に10ヶ所あり、ここ久慈もそのうちの一ヶ所で水封式地下容器タンク方式で備蓄しているとのこと。

水封式地下容器タンク方式とは、水面下に作った岩盤タンク内に水と石油の重さの差を利用して石油を貯蔵…とまぁ、話せばキリがない。

 

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トンネル掘削関連の展示も豊富だった。初めてトンネルが作られたのは、紀元前2,000年ごろだという。

ちなみに山口~福岡県間の関門トンネルは、世界で初めてシールド工法を使い作られた海底トンネル、北海道~青森県間の青函トンネルは、今なお世界最長の海底トンネルとして名高いなど、日本はトンネル界において優れた実績を持っているようである。スゴい。

 

 

水族館というのは、その場所独自の学習もできるのが面白い。例えば前に寄ったアクアマリンふくしまでは、潮目の生態系やシーラカンスについてなどの学術的記述が豊富だった。ここではそれが、石油や地下抗の話になっているというワケである。

 

水族館に限らずいつも思うが、こうして様々な地で、実際の事象を目の当たりにしながら学習するというのは、とても楽しいことであり、頭に入りやすい。この旅が終わるころには、少なくとも前よりは博識になっていることだろう。

旅路とは知識の路である。

 

 

で、メインの水族館だが。とくにそこまで語る事はない。

誤解がないように言っておくが、つまらなかったワケではないのだ。ただひたすら、海洋生物に癒されてボーッとしていただけである…。

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そうそう、忘れちゃいけないのが、ここ久慈は何年か前のNHKドラマ『あまちゃん』の舞台となった場所でもある。ここでは、土日祝に実際に海女さんの泳ぎが見られるパフォーマンスもあるそうだ。

 

 

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腹しか見せてくれなかったアオウミガメのかめ吉くん(雌)。

地下水族館ということもあり3.11で壊滅的な打撃を受けた本水族館はにおいて生き残った、数少ない生き物のうちの一体である。震災後しばらく『八戸市水産科学館マリエント』に預けられていたらしいが、2016年に帰ってきたそうだ。

ちなみに同じく震災を生き延びたクサガメのかめ太郎もいたらしいが、2018年にバックヤードにて永眠についたそう。悲しい。

 

 

地下から戻り、2階以上へと昇っていくと震災についての展示があった。

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小さな子供たちにも伝えるため、対象年齢低めの本も置いてあったのが印象的。

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この際だから言ってしまうが、私は被災についての話が出るたび真面目な顔になるほど、人情にあふれた人間ではない。当時被災したとはいえ家を流されたわけでもないし、そこまでトラウマというものはなかった。だが、

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なぜだか、この写真を見たときに目頭が熱くなってしまった。未だにその理由は不明である。

 

ただなんというか、当時の苦労を、犠牲を、絶望を。そしてそれから立ち直った勇気と努力を、後世に絶対に伝えようとする想いに胸を打たれたようだ。

あのときいなくなった大切な人や物や景色は、無駄にはなっていないんだよと。もうあんな悲劇は起こさないぞと、胸を張って言える人類が誇らしく思えた。

 

 

 

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いつかはなくなると言われている石油だが、実は資源の探査・採取技術などが向上することによって未だにその可採年数は増えているという。また、メタンハイドレートなど新たな資源の活用研究も飛躍的に進歩している。

果てを知らない人類技術の進歩には驚くばかりだが、それに加えて人類は、過去の惨劇を記憶できる生き物だというのだから素晴らしいではないか。

 

前ばかりではなく、たまには後ろも見て。先人たちが何を伝えたかったのか、きちんと理解してから、前に進む。

きっと、我々一人一人がそれを実行しているから、世界は進んでいくのだろう。

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