風来記

侍モドキとバイクの放浪旅を綴ってます。

太陽のような

616

 

IMG_0913.jpg

北山崎・黒崎より普代駅などで雨宿りをしつつ、雲の合間を縫って道の駅『のだ』へと滑り込む。

一息つく暇もなく、数分後にはまた豪雨の予報。急ぎツーリングバッグ類にカバーやコートをかけ、道の駅に駆け込もうとすると。

一人のライダーの後ろ姿が目に入った。

 

…ん? あの風魔プラス1のツーリングマスター、それに、あのVストローム250…。まさか

たちまち駆け寄り、

「賀曽利さん!」

 

白髪・小柄の年配男性は振り返ると、「ああ!」と言ってくれた。


IMG_0910.jpg

 

そう、あの鉄人ライダー、として知られる、賀曽利 隆氏だ。

日本を何周もしていて、海外も走ってて、テレビにも出た、あの賀曽利氏である!

氏とは、以前雑誌編集の仕事をしていた際に面識があったのだが。覚えていただけているとは嬉しかった。


「谷田貝(以前の職場の上司)から日本一周してるとは聞いてたんですけど、まさかここで出逢えるとは…!」

「いやあ、分割式日本一周はこの間ジクサーで終わらせちゃってね、今は東北一周してるんだ。」

「今回は、何の雑誌のお仕事でですか?」

「いや、プライベートかな。いつも旅してるしね。」

さすが、である………。

 

道の駅の軒先で話していると、天気は一気に悪化、雷を伴う豪雨となったので、しばしベンチで話し込むことにした。

「ここは任せてよ。」

とのことで、なんと売店で弁当なども買っていただく。僥倖とはこのことか。

 

「前の仕事はやめちゃって、今はほぼプライベートで日本制覇の旅をしてるんです。」

「おーいいねぇ、旅の期間はどのぐらいで?」

「だいたい、一年ぐらいかと…」

「1年!? 1年か~っうらやましいなぁ! 僕もそのぐらいしたいよ!」

正直、私如きが1年と答えるのに少し恥じらいはあったのだが、旅の鉄人は全肯定してくれた。

「1年ともなるとさ、いろいろと大変だと思うけれど。後々、それをやっといてよかったなぁって思うときがぜっったい来るハズだから。糧になるはずだから、頑張ってよ!」

と、とにかく励ましていただいた。

努力は報われるといった類の言葉は錆びがつくほどあちこちで飛び交っているが、やはりこういう方が、同じような経験をしている方が言ってくれると、ともかく胸の内がスッとするものであった。

 

それから、実家のことや北山崎など岬の話、互いの今後の話、北海道の話などなど、話し込んでいると、予報より早く天から光が差し込んできた。

「それじゃあすまない、先に行くよ。」

バイクにまたがり、片手で挨拶をする賀曽利氏。ヘルメットをかぶると、こちらに向き直りこう言ってくれた。

「今日、こんなところで会えたのは、すっっっごく嬉しかった。どうか旅、頑張って達成してね。楽しい旅にしてね!」

俺も、すっごく嬉しかったです。と、言葉で表し切れない感動を伝えると。握手を交わし、鉄人は颯爽と軽快なパラツインの音を響かせ、道の先へと消えていった。

 

IMG_0911.jpg

 

旅ってのは、いや、世界ってのはつくづく狭いというか、面白いものだ。

今日、岬巡りをしなければ。途中で雨宿りをしなければ。腹を壊してトイレに駆け込んでいなければ。恐らく、賀曽利氏に会うことはなかっただろう。

よく、あそこであれをしなければこんなことには…。と後悔することが多いが、それと同じくらい、世界は幸運であふれているのだろう。

 

雨上がりの空には、虹が架かっていた。

IMG_0924.jpg

Leave a reply






管理者にだけ表示を許可する